『ニンゲン御破算』これぞ松尾歌舞伎!・2018年6月舞台
シアターコクーン通いが続いております。
今月の舞台は、松尾スズキ作・演出の『ニンゲン御破算』。阿部サダヲを主演に、岡田将生、荒川良々、多部未華子と豪華キャスト。
松尾スズキ氏主催の「大人計画」が中心になった舞台なので、笑えるだろうなと期待していたのですが、期待以上!むしろ混沌とした世界観が凄かった。
あらすじは、幕末の江戸が舞台。芝居好きが高じて、狂言作者を志す加瀬実之介(阿部サダヲ)が、人気作家の鶴屋南北(松尾スズキ)、河竹黙阿弥(ノゾエ征爾)に弟子入りしようとしてダメ出しされる中、自分自身の話を語り出す……という体で、彼自身の人生語りに荒川良々と岡田将生の兄弟、その幼なじみの多部未華子が絡んで行く話。
実は、15年前の再演であるこの舞台、初演は故・中村勘三郎(当時の勘九郎)を主演に迎え、タイトルも「ニンゲン御破産」と“さん”違い。今、振り替えると松尾さん曰く“歌舞伎に対するパンクな気持ちが出ちゃってた”そうで、今回も相当テンポが速いのですが、それ以上にしっちゃかめっちゃかだったようです。
先月、ちょうどコクーン歌舞伎を観たばかりのせいか、そのしっちゃかめっちゃかさが歌舞伎に近づいているみたいで、これは「松尾歌舞伎」だな、と感じてしまいました。
導入がコンテンポラリーダンスだったり、音楽も場面に併せて、舞台下でジャズ演奏、舞台上で邦楽(長唄)演奏と、凝ったつくり。
舞台には、リアル池があって、結構ずぼんずぼん人が落ちてました。
とにかくテンションが高くて、大人の悪ふざけみたいな舞台なのですが、しっかり伝わってくるものもあります。
正直なところ、松尾演出としては「キャバレー」より面白かったかも。
個人的には、今回前から3列目の通路側席だったのですが、出端の岡田将生がまさに隣で芝居(それも少し長めに)するんですよ!もう、超硬直、心臓バクバクで見れません。でも、ちらっと見上げたらまあ、美しいこと。肌真っ白で。すらりと長身で声もよく通るんですね。
声が通ると言えば、多部ちゃんもよく通る良い声でした。一番笑ったのが実は多部ちゃんで、彼女の役・お吉は、物質を入れ替える技を使えるのです。
ただ、それをホンキで使い出すと、なぜかインドのダンサー(男女)が現れて踊り出し、その隣で表情を変えず真剣な顔の多部ちゃんが、術をかけるための踊りを結構長く踊るのです。
それがもう、なんだかツボに入って笑いが止まりませんでした。
あのダンス観るために、WOWOWセットしよっと。(まだ放映時期は未定ですが、今回カメラが入ってました!)
とにかく俳優が個性派揃いで、女子では平岩紙ちゃんや、平田敦子さんがとても良かった。
お祭り芝居なので、また観たいような気もします。これから観る方は、ラストの大ドンデンに驚愕してくださいね。
『ニンゲン御破算』
・6/7〜7/1 (東京)Bunkamura シアターコクーン
・7/5〜7/15 (大阪)森ノ宮ピロティホール
※追伸;そうそう!松尾スズキさま、芥川賞候補おめでとうございます!