『万引き家族』向こう側の物語・2018年6月映画
今年のカンヌ映画祭でパルムドール(大賞)を受賞した、是枝裕和監督の『万引き家族』。先行上映に行ってきました。
映画には、文字通り監督のカラーがありますが、是枝監督の映画で印象的なのは、重めの空気感、光と影のコントラスト。出演者がまるで普段着のまま演じているような、息づかいを感じるカメラワーク。
見始めて、すぐ思ったのは、もしかしたら苦手なタイプかも?という不安感。実際、「誰も知らない」は、まだ見ることができないでいるぐらいです。
でも、樹木希林、安藤サクラ、松岡茉優という大好きな女優さん3人の演技が観たくて集中しているうちに、不安は払拭されました。
何より、子役が可愛い。本当に是枝監督は子役使いが上手です。
本日、明日の2日間限定✨
全国の劇場で先行上映中です😆世界大注目のあの家族をいち早く観に来て下さいね❗️ pic.twitter.com/CBRLtfhyqG— 映画『万引き家族』公式 (@manbikikazoku) June 2, 2018
最初に感じたのは、ここに描かれている家族……あまり働かず、母親の年金に依存する父、やさしいけれど少しだらしない母、優しい祖母、性産業で働く妹、学校に行けない息子、拾われてきた?娘…は、日本の最下層の家族の典型。
しかも、父親は小学生の息子に万引きを教え、二人で組んでそれを生活の糧にしているのです。
これはカンヌでウケるな、と正直思ってしまいました。日本の下層家庭なんて、ヨーロッパの人には興味深いんだろうなと思ったのです。
でも、ストーリーが進んでいくうちに、大反省!
是枝監督が描いていたのは、そんな簡単な話ではありませんでした。
貧しくても、万引き家族でも、お互いが思いやって、やさしく、笑顔の絶えない家族と思っていた5人(新たに加わった娘以外)には、最初からわずかな違和感を感じるのですが、それが段々明らかになっていくのに加え、一人一人にも向こう側(秘密)があったのです。
家族の笑顔に気持ちの逃げ場を求めつつ、観続けていくと、ある事件をきっかけにいきなりバランスを失った家族が崩壊します。
ただ、それは悲劇的なものではなく、必然であり、それも想定内であったかのよう。
淡々とその後のストーリーも続いていく様子に、5人の未来(向こう側)を知りたいと思いながら観終わりました。
役者に関していうなら、やはり圧倒的に安藤サクラの名演!アップになるシーンがたくさんあるのですが、その度に別人のように表情が変わって、セリフはなくても顔で語るのが凄い。
サクラさんに負けずに松岡茉優ちゃんも素晴らしかった。特に無表情の演技が多い中、たまに笑顔を見せるシーンが印象的で、彼女の秘密が明らかになるとそれが更に深く刺さります。
そして家族の演技をどーんと支えるのが樹木希林さん。海でのアップの笑顔が忘れられません。凄い存在感でした。
観たばかりなので、特に印象に残ったことを書いてみましたが、本当はもっと言葉にできない深さのある作品だと思います。