『密やかな結晶』石原さとみの涙・2018年2月舞台

ドラマ『アンナチュラル』が、なぜ放映前に収録し終わっていたかというと、主演の石原さとみさんが4年ぶりに主演する舞台があったからでした。

それが『密やかな結晶』。原作は小川洋子さん。「妊娠カレンダー」で芥川賞を受賞し、「博士の愛した数式」をはじめ映像化された作品も多数。

原作はこちら↑

さとみちゃんの久々の舞台と聞いて、先行から申し込んでチケットをGet。その後、早速原作を読みました。

余談ですが、最近は舞台にしてもライブにしても、“予習”した方が楽しめるようになりました。昔は、何も知らずに行って楽しむことができて、「ヘタに予習すると感動よりも確認になる!」なんて突っ張らかってましたが、年齢のせいでしょうかね。

アニメや映画なんかだと原作後読みの方が楽しいのですが、芝居やコンサートなんかのライブものは、何も知らないで行くとわからないまま終わってしまうことが多いので、時間がなくてもあらすじをwikiで読んだり、ツアーコンサートならセットリストを確認したりしていった方が楽しいですね。

閑話休題

この原作がすごくて、最近読んだ小説の中でも特にインパクトが強く、記憶に残っています。ずっしりと重いのに、静かで透明な印象です。

設定がファンタジー。舞台は海に囲まれた島で、そこでは突然“消滅”が起こるのです。

何が消えるかと言えば、現象だったり、物だったり。たとえば、花が消えるとすると、島民はそれが花であることを認識できなくなり、すべて廃棄されます。そして、花にまつわる記憶も消えて行ってしまうのです。

ただ、その中にも記憶を持ち続けることができる人がいて、そういう人たちは異端者として秘密警察にによって排除されます。(舞台でのその様子は、まるでナチスによるユダヤ人狩りのようでした)

物がどんどん消滅してしまう島ですから、人々の暮らしは豊かなはずがなく、貧しい中にも淡々と時間が進んでいます。

主人公は、その島に一人で住む小説家の「わたし」。小説では彼女の一人称と彼女の書く小説が交互に語られていきますが、舞台では彼女(石原さとみ)と、おじいさん(舞台では外見が歳をとらない設定で、村上虹郎)、彼女がかくまうことになる、記憶を持ち続ける編集者R氏(鈴木浩介)の三人のストーリーになっています。

舞台を先に知っていたせいか、小説を読んでいても主人公は石原さとみに当て書きしたのかと思うぐらい、イメージがぴったりでした。

東京芸術劇場 プレイハウスにて

諦観とも違う、消滅を受け入れて生活している彼女と、記憶の大切さを気付かせようとするR氏。二人は密やかに惹かれ合うのですが、お互いを受け入れることは、お互いの否定にも通じるという世界。

その中で消滅がどんどん続いていき、彼女の肉体の一部も消滅してしまいます。

そして、それが進んだ先にあるものは……

とても重いのですが、ぎゅうっと凝縮されていく世界がラストにぱっと反転して光が差す。そんな印象を受けました。

原作を読んですぐ観に行ったので、重い空気を覚悟していったのですが、むしろ透明感の勝る舞台でした。

演出が「月はどっちに出ている」や「愛を乞う人」の鄭義信さんでしたが、シリアスな中にもミュージカル風の演出があったり、笑わせる部分のあったり、バランス良く進みます。

なんでここで踊る?と思うシーンもありましたが、そのおかげで飽きることなく、ぐいぐい世界に引きずり込まれるような感じ。

特に秘密警察隊長役の山内圭哉さんが良くて、さんざん笑わせてもらいながら、最後に原作にない設定でぐっときました。

そして、ラストの「わたし」とR氏の対話のシーン。オペラグラスを通して、涙を流しながら演じている石原さとみちゃんに本気でもらい泣き。

舞台の感動泣きじゃなくて、主人公に感情移入して泣いたのは、始めてかも。

女優・石原さとみに、やられました。彼女は、すごく努力していても、それを出さず、逆に自然体で楽しんでるように見えるところが素晴らしい。

もっと舞台で観たい女優さんです。

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