小説『スコーレNo.4』宮下奈都著の、心理描写にのけぞる

2016年の本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』。ピアノの音に魅せられた少年が、調律師として成長していくお話でした。

すごい事件が起きるわけでもなく、ただ淡々と、透明で、まっすぐな小説。読んでいると、すっと背が伸びるようで、読み終わったときに、気持ちがきれいになりました。

その作家・宮下奈都さんの作品の中でも、とても人気があるのが、TBS『王様のブランチ』でも紹介された、『スコーレNo.4』。
スコーレとは、スクール(学校)のことで、骨董屋の姉妹の長女・朝子が中学、高校、大学、社会人へと成長していく物語です。

祖父から引き継いだ地方都市の骨董屋を営む父、さまざまなお稽古事で才能を発揮しながらも、すべてをやめて家庭に入り、それを楽しむ母、いろんなことにこだわりを持ち、きちんと生活する祖母。そして、自分と比べて不公平なほど器量の良い妹、明るくにぎやかで“お豆さん”の下の妹。

そんな環境の中で、麻子の、ちょっと醒めたのか、鈍感なのか、天然なのかよくわからない独特の目線で物語が進行します。

私がのけぞったのは、麻子の初恋からの男の子に対する心理描写。出会って、意識していることにも気付かずに、やがて目が離せなくなっていく自分に戸惑い、あっけなく別れが訪れたり、ぶつかったり、そして最終章では……

一人称で書かれた文章は、そんな女の子の心の機微が、絶妙な言葉で表現されており、この年齢になって卒業したはずの、あの気持ち、音にするならkyunkyunが何年ぶりかで蘇ってきて、も、胸えぐられると同時に、うまい!まいった!!降参!!!という感じでした。これはゼヒゼヒ実際に読んで体験してもらいたいところです。

作者の宮下奈都さんは、福井在住で3人お子さんがいるそうです。
デビューしたのが、3人目のお子さんを妊娠中という、ある意味エネルギーのある方ですね。

エッセイによると、3人目のお子さんができたとき、上のお子さんが3才と1才で、“このままだと私の人生は育児になぎ倒されてしまう”といいう切実な焦燥感から、何かしなければと書き出したそうです。

……ホント凄いけど、そこかい!とも思ったりして。そういう突っ込みどころのある人が出てくるのが、また宮下さんの小説の面白さでもあるのです。これからエッセイ集『はじめからその話をすればよかった』を読むのが楽しみです。

 

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